上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009
09
23

戦時急造艦

 大会議室では既に夜を徹して、新型海防艦についての議論が戦わされていた。
 潜水艦の跳梁跋扈に船舶の被害は急増、もはや現在の海上交通網はこのままでは維持できない事態に陥っていたのだ。

 「……だから、何度も言っているだろう。現在の従来型海防艦では手間が掛かり過ぎるんだ。もっと簡単なものでよろしい」
 海上護衛総司令部の作戦参謀は、延々と続く水掛け論に疲弊を隠せなかった。

 「松級駆逐艦でもだめですか」
 艦政本部の技官は何が何でもこだわりのある船を作りたかった。

 「あれはいいフネだが、もっと簡単なものがいい。早く造れなければ意味がないんだ」
 「甲型海防艦もけっこう早く造れるんですが」
 「もっと簡単にしたまえ。凝り過ぎなんだよ、だいたい。なんであんなに艦橋とか船体とか流線型なんだよ。松級みたいなまーっすぐな形にしろ」
 「……では新たなバウ形状を取り入れて、低出力でも高速発揮を」
 「いや、だからさ。そんなのいらんから。船団つっても10ノットも出ないんだよ。15ノットも出れば十分だ。電探と高角砲と、新式の爆雷だけは搭載できるようにせよ」
 「新式爆雷。電探。では先日資料で見かけた米海軍の護衛駆逐艦、ジョン……ジャック……ジャクソン……サミュエル・L・ジャクソン?」
 「誰だよそれ。ジョン・C・バトラーか?」
 「そうそう、それをコピーしましょう」
 「……できるのか?」
 「ええ、まあ、一年くらいすれば色々検討してですね」

……。

 護衛艦隊の参謀は眉間の皺を一層深くすると、
 「今すぐできるフネだ! 今! この場ででも!」
 叫んだ。ついに切れた。
 鉛筆を掴んだ彼は、艦政本部の技官に詰め寄ると、目の前にある藁半紙をひっつかんで鉛筆をがりがりと走らせた。
 「バーっとまっすぐ線引くだろ? で、箱型の艦橋な? 前と後ろに高角砲! 横に機銃! 艦尾に新式爆雷! これでいいんだよ! ガキでもこんな絵描くだろ? この通り作れ。すぐ造れ。今造れ。ほれ造れ」 技官は顔に張り付けられた藁半紙を眺めた。
 「……参謀さん。マストがありません」
 「だーーーーーっ! マストなんか好きにしろ! こうしてる間にもどんどん輸送船がボカ沈喰っとるんだ。帰ってすぐ造れ。明日もらいに行くぞ? もらうまで毎日行くぞ? さっさと造れ」
 「では、すぐ造ります」

 技官は満足したように帰って行った。どんなマストにしようかな。5脚式がいいかもしれない。網目状に組み上げるか。いや、梯子段の上にX型に支柱を通して……
 「やれやれ。やっとわかったかな。しかしこだわり過ぎなんだ。技官というものは」
 参謀はすっかり冷たくなった出がらしのお茶をまずそうに啜った。

 「作戦参謀。こちらでしたか。早く次の船団計画を送れと運輸省から矢の様な催促が……」
 当番兵が書きかけの航路図を片手に駆け込んできた。
 「ああ、駄目駄目。そんなまっすぐな航路じゃ。まずこっちへ寄って、意表を突いてジグザグに進んで、そうだついでに此処にも寄って、一旦引き返して……ああ、まだ無理だね。もっとこう、航路にはこだわらなきゃ。まっすぐ進んで帰るだけなんて俺は許さないぞ。うーん。検討してからだから、一週間、いや、一か月くらい待てと伝えてくれ」
「……」

 戦時急造艦はマスト以外はどんどん出来たが、国は敗戦した。


というような小話を思いついたのですが、あまり本文とは関係ないです。どこの国とも言いませんよ。ええ、どっかの国を彷彿としたとしてもそれはあなたの思い違いです。たぶん。

ポケット戦艦を造りながら、ふと見ると夜想亭さんが表敬訪問に来てくれているのに、当工廠にはお出迎えするフネすらない。ランチしかない。
これではいかん、と。
何が何でもすぐフネがいる。すぐ造れ。それ造れ。今造れ。というわけで。
昨日買ったばかりの丙型海防艦を造り始めました。昨日から。
で、今日。
090923_014130.jpg
早い!
さすが急造艦です。
造りやすくてモールドも細かいです。それでも何とも言えないこだわりが感じられます。小さくても帝国海軍の魂継承ですな。ともかくも、一日で進水。竣工にはまだ細部をこだわらなければなりませんが(笑)

後ろから
ssize090923_014339_convert_20090923033249.jpg


うーん。美しい。三式爆雷投射機のずらりと並んだ様は壮観です。後部砲も防盾付きにしました。だって、乗組員が大変じゃないですか。むき出しだと。ええ、なんでも出せばいいというものではないのです。チラリズムの美学です。(違
そして電探室を増設。丙型は急造で戦訓を取り入れながら建造が進んだので、様々な武装や装備のタイプがあります。並べてみるのも面白いですね。
そうそう、写真用に海面シートを買ってみましたがいかがでしょうか? きれいに見えますか?

そして資料にはこれ。
090923_020254_convert_20090923033200.jpg

高校生のころに買って、当時クラスで「どんな写真集をもっているか」という男子校にありがちな若気の至り的自慢大会が行われた時に自信満々で持って行きました。

どん引きでした。

十年以上たって役に立つとはなあ。よくやった。若かりし頃の俺。



え? ポケット戦艦ですか? 手を抜いてるんじゃないか? 浮気して忘れてるんじゃないか? いえいえ。
それはこちら。
090923_015908.jpg
艦首の形状修正中です。パテ→プラ棒→削る→削り過ぎ→パテ→ヤスリ→パテ……

エンドレスエイト。









スポンサーサイト

Comment

  1. ただいま「非公開コメント」も受付中です。
  2. No title

    2009/09/23(Wed) 10:12夜想亭 [ URL|Mail ]

     丙型海防艦、完成おめでとうございます。
     いくら、急造艦とはいえ短期間で完成させるのは凄いと思います。きちんと防水布や電探室までありますし。
     大井氏の「海上護衛戦」が、中高時代の愛読書だったので、海防艦は大好きなんですよ。昔に作った「鵜来」、丙型、各一隻しか残ってないので、また作ってみたくなりました。

     あと、海防艦付属の艦載水雷艇はスペースがありましたら、ポケット戦艦に載せると雰囲気が出ると思いますよ。

  3. ツンドラッヘ→夜想亭さま

    2009/09/23(Wed) 14:44ツンドラッヘ [ URL|Mail ]

    夜想亭さま、コメントありがとうございます。
    しかしまだ! まだ終わらんよ! 
    進水しましたが、実は探照塔が小さな円形台がなくてついてなかったり、煙突上部の塗装もまだだったりします(笑)
    ちょこちょこ弄りたいですね。こういう小型艦こそは、細部に拘りたいものです。料理で言うと「きんぴら牛蒡」や「切り干し大根」みたいなつきだしクラスのもので、決してメインディッシュにはならないですが、それが美味しいとその店は期待できるでしょう? まあ、そんな感じで(笑)
    「海上護衛戦」はいい本ですよね。大井さんのパラノイアぶりがなんとも(笑)
    ユリシーズやキーリングも大好きなんですよ。私。いつか夜想亭さんの海防艦と船団を組めれば楽しいですね!

    艦載水雷艇! そういう使い方がありましたか。なるほど。しかし17m艦載艇はでっかい(笑) 南雲さんがあれで出撃するシーンは泣きました(←八八艦隊物語・ポートモレスビー陥落)

Comment Form


管理者にだけ表示を許可する

工廠管理人

ツンドラッヘ

Author:ツンドラッヘ
狭い部屋でも模型はできる。十年ぶりに再開した模型製作記。そのほか読書やゲーム、映画など趣味のブログです。コメントや掲示板は常識的な範囲でご自由に。感想や模型製作のアドバイスなどお待ちしております。

また、このブログはなんら政治的・軍事的・宗教的な表明や意思表示を示すものではありません。管理人はオタクですが、それを強要するつもりもありません。世界が安穏ならんことを切に願います。このブログに掲載の一切の文章・画像の無断転載を禁じます。

現在の技師数

最新トラックバック

工廠公式後方支援

只今絶賛応援中♪ 

「蒼海のヴァルキュリア」応援中! 「蒼海の皇女たち」応援中!

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード

工廠勤務者談話室

掲示板です。感想などお待ちしています。コメントは各記事タイトルの◆から記入できますのでそちらもどうぞ♪

工廠電信室

掲示板には書けない。あなただけに伝えたい。そんなシャイなあなたにはこちら。

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。